Tuesday, October 05, 2004

あそこは公共の場か、私的空間なのか

ススキノに監視カメラ構想[北海道新聞]

 ススキノは「経由点」としてよく行くのだが、こんなところにカメラが置いてあるとは知らなかった。ススキノよりちょっと手前には、資生館小学校という札幌で一番新しい小学校があるのだが、そのド真ん前に「この地域から暴力団事務所をなくそう」という立て看板があったりする、実にほほえましい場所である。

 ススキノはいわゆる「ロビンソン前」というメインストリートがあり、ここは比較的治安の良い場所として(近くにすすきの交番もある)よく待ち合わせの場所に使われている。しかし、同じストリート上で、昨年暴力団による傷害致死事件が起こっていたりするわけで、まあ一つのデンジャーゾーンであることには変わりない。


 今日ここで問題にするのは、「果たして繁華街の路上にプライバシーは存在するのか」ということである。

 たとえば、私は大通公園にたくさん監視カメラを設置しておこう、という意見があれば、文句なしに賛成する。公園というのは「公共の場」であり、そこで行われる行為についてプライバシーがどうのこうの、というのはナンセンスであるように思える。

 公共の場にカメラを設置することについて、立正大学 小宮信夫助教授「あなたにもできる銃犯罪防止活動」(PDF)から引用する。

(5ページ目)
 防犯カメラの話になりますと、必ずプライバシーの侵害になるのではないかと言う反論があります。しかし、イギリスは世界で最もプライバシーを尊重する国の一つです。プライバシーというのは、個人の私生活がみだりに他人の目にさらされない、と言うことです。そうすると公共の場所に防犯カメラを設置する場合には、そもそもプライバシーとは衝突しないとも考えられます。なぜならば、プライバシーが制限されるからこそ、その場所が公共の場所と呼ばれるからです。ですから、公共の場所におけるプライバシー、という問題の設定自体が矛盾しているわけです。プライバシーが制限されているからこそ、その場所は公共の場所なのです。また、イギリスの場合には、防犯カメラのほとんどは、地方自治体が管理しています。警察ではありません。


 つまり、小宮先生の意見は「公共の場でのプライバシーは制限されるが、私的空間でのプライバシーは厳に守られるべきだ」ということである。

 ここで、ススキノの場合を考える。ススキノは、普通の「お酒を飲むお店」がいっぱいあるところなのだが、その範疇に入らないお店もたくさんあるところである。

 数年前の歌舞伎町ビル火災の際にも明らかになったが、そういうお店に誰それが行っている、ということは相当なプライバシー上の問題になる。また、使いようによってはある人間に対する脅迫材料にさえなりかねない。

 監視カメラを設置することが果たして「公共の場」を守ることになるのか、あるいは「私的空間」を犯す事になるのか、ということについての問題である。また、カメラの管理権を警察に与えて良いのか、という問題でもある。

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 実は警察に監視カメラ設置されて、一番困るのはススキノをこよなく愛する政治家の皆さんじゃないのか、という気がする。

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 追記:同じ講演の中で、「クライム・ストッパーズ(匿名通報システム)を整備すべきだ」とも言っておられる。私もこの点については賛成だ。

 過去に2回ほど110番通報をした経験から言うと、何もやましいことがないはずであるのに、やはり警察を呼ぶという事に関しては一抹の躊躇が生じるものだ。

 そもそも「オレは○○町から来た××だ!」と名乗って入る強盗もいないわけで、犯罪とはもともと匿名でやるものである。被害者(あるいは被害者予備軍)の方だけ匿名性がない(警察にマークされる)、というのは、どこかフェアでない気がする。

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