Tuesday, February 11, 2003

なんで死ぬか

 実は、喫煙者は医療費抑制に一役買っている、という説がある。

 たとえば、日本全体といったような、ある規模の人口集団を考える。
 この集団の中で、たとえば2000年度といった、一年間で切った医療費の総額についてみてみると、この統計では喫煙者は、非喫煙者に比べて一人あたりの医療費を多く使っている、ということになる。すなわち、一見して煙草吸いは、嫌煙家に比べて医療費を無駄遣いしている、ように見える。

 しかしながら、人間一人が一生涯に使う医療費、という面からすると、これは逆転するのだそうだ。

 なぜなら、喫煙者は非喫煙者に比べ、早く死ぬからである。

 病院に、こまめにかかると健康管理が出来て、長生きできる。「一病息災」などという言葉がある。しかし、本当にそうだろうか。

 医者というものは、ある一定の年齢以上になると、必ずなにがしかの学会に属する。学会から、「認定医」や、「専門医」というお墨付きをもらわない限り、医者の世界でのステイタスが認められないからである。従って、よほど若い医者でない限りは、何らかの「専門」を持っていると考えた方がよい。

 この「専門」というのがくせ者であって、たとえば心臓を専門とする医者と、胃癌を専門とする医者では、語る長寿の秘訣が違ってきたりする。
 アルコールの扱いひとつにしても、「癌を防ぐ12カ条」(国立がんセンター編)では「少なければ少ない程良い」ということになっているが、循環器専門医の立場から言えば、毎日ある程度のアルコールを摂取することは、冠動脈疾患で死ぬリスクを有意に下げる、というエビデンス(大規模臨床試験に基づく結果)があるのである。

 要するに、どんな医者でも「自分のところで患者が死ぬ」のは嫌うわけで、それぞれの専門の病気で死なない方法にしては、事細かにアドバイスできる。できる割には、結局自分の専門の病気で死んだりする。

 先日、ある先生が「転移性XX腫瘍については、手術すれば少なくともその部位で死ぬ可能性をX(注:一桁)%落とせるのだから、積極的に専門医に紹介するように」と仰せになったとき、そんなことをふと考えた。

 というわけで、自分のカラダを守るのは、消費者たる患者サマのみなさまです。その点、お忘れなきように。

 (多分、これに関しては多くの医者も賛成してくれると思う。)

あーあ、こんなこと書くからいつまで経っても・・・なのね。