Wednesday, September 29, 2004

老いる田舎は、ますます老いる

静内の産婦人科、筋弛緩剤で母死亡 注射直後、胎児も 病院側はミス否定[北海道新聞]

 あまり軽々しくコメントを出すものではないが、この一件は「出産は都市で」という流れを強めるきっかけになるのかも知れない。上の記事を読んだ限りでは、すぐに医療事故として警察に届け出たようで、少なくとも事が起こってからは出来る限りの対応をしたように思われる。

 ただ、難しいのは「出産」というものの扱いである。

 世間一般では、赤ん坊が生まれるのはあたかも自然の成り行きで、「五体満足に生まれるのが当然」という考え方が主流だろう。今回のように帝王切開の最中に起こった事故となると、一般の人が受ける感想としては「医者が無茶な手術を敢行するからこんなことになった」というところが主だと思う。

 しかし、帝王切開を行うからにはそれなりの状況があるわけで、実際国家試験の産婦人科問題でも「帝王切開」が選択枝にある問題は少なくない。すなわち、「こういう危険な状態になったら、すぐに帝王切開をしないと生命に危険が及ぶぞ、おまえらしっかり勉強しておけ、さもないと免許やらんからな」ということなのだ。

 また、出生率の低下が全国的な問題になりつつあるが、新生児死亡率の低さについては、日本は先進国でもトップクラスだ。従って、ますます「生まれて当然」という風潮は強くなり、産婦人科医に求められるものは重くなる。

 従って、昔のように地方の産院で、一人のセンセイががんばって赤ん坊を取り上げる、といった状況は成立しにくくなる。出産は複数の医者がいる都市部の大病院で、という話になるのだ。

 しかし、一旦都会に出た若者は絶対に田舎に帰りたくなくなる、というのが世の常である。(もちろんそれは、田舎出身の医科大学生にもあてはまることだ。)

 となると、ますます田舎で生まれた赤ん坊が、しかるべき年になって都会へ出て、そこで相手を見つけて、都会で家庭を築いてしまう、という流れが完成するわけで、それは長い目で見るとますます過疎化を進めてるだけじゃないのか、という気もする。

 参考記事:
医者がいない/地方の産婦人科ピンチ[asahi.com MY TOWN 北海道]
健診は診療所 出産は病院[YomiuriOnline]
出産は大病院へ集中を 産婦人科医会が見解[Y! 共同通信]

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 大体北海道で「都市部で出産を」といったら、「大学病院のある都市で出産を」という言葉と同義になってしまうと思うのだが。
 そうなると、またどこかの町長サンが赤旗振りかざして激怒するのだろう。

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