Sunday, January 11, 2004

捕虜でいいのか

フセイン氏を「戦争捕虜」に正式認定 米国防総省[asahi.com]


捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)[防衛庁]には、こう定めてある。

第十七条〔捕虜の尋問〕 各捕虜は、尋問を受けた場合には、その氏名、階級及び生年月日並びに軍の番号、連隊の番号、個人番号又は登録番号(それらの番号がないときは、それに相当する事項)については答えなければならない。


 この条項を厳密に適用すると、敵国の捕虜を捕らえることにたいしたメリットはないことになる。

 つまり、「大量破壊兵器の在処はどこだ」とか、「一体おまえの隠し財産はどこにある」とかいうことは、聞いてはいけないのである。もし、それが尋問によりわかったとしたら、(どう考えてもフセインは自発的に話すタマではなさそうだから)それはアメリカ側による何らかの拷問や、少なくともこのジュネーブ条約に違反する事があったことを強く示唆する。

 実際の軍事作戦においては、「捕虜を捕らえる」目的の作戦は多く実行されている。主に敵国の重大な軍事情報を握る将校を目的として、大きな成果を上げることが多いようだ。その裏には、「戦時国際法には罰則が存在しない」という現実がある。

 ただ、何でこの時期にわざわざアメリカが「戦争捕虜」認定を行ったのか。私にはどうしても解せない。

 そもそも、「戦争捕虜」とは軍人として戦ったものに与えられる一種の特権であって、たとえば市民と区別できる軍服・記章をつけないで他国の軍隊を攻撃したもの(『ゲリラ』または『テロリスト』)には、捕虜になる権利が与えられない。

 サダム・フセインは、確かにイラク軍の最高司令官であるという立場から考えると、軍人の一人である。しかしながら、同時に国家規模の犯罪者である、というアメリカの主張を考えると、「捕虜ではなく、単に犯罪者である」とした方が、通り良かったのではないか。

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