Friday, January 14, 2005

高脂血症考。

via ちりんのblog

 高脂血症治療薬云々で思い出す一冊の本がある。これである。私は書店の店先で立ち読みしただけであるが、様々な意味で「怖い」本である。正直、この本を買うと印税が著者に入り、訴訟費用に使われてしまうのか、と思うと財布を開く気になれなかった。

 確かに、スタチン類と呼ばれる一群の抗高脂血症薬には、「横紋筋融解症」という重篤な副作用が生じ得ることが知られている。そもそもスタチン類はコレステロールの体内合成を抑制する作用のある薬剤である。だが、コレステロールは人間の細胞膜を構成する上で必須の成分でもある。従って横紋筋融解症とは、スタチン類を過剰投与すると、ときに細胞膜成分が崩壊し、主に筋肉細胞が融解してしまう、という病態である。このとき、細胞の中にあったクレアチンキナーゼ(CK)という酵素が血液中に出てくるので、この値の上昇を見逃さないのが早期診断における重要点であるとされる。

 しかし、この本を読むと、初発症状が出た段階でCKの上昇が見られなかったという。そのときの医者の言い方が「何だ、このくらいのCKの値で、心配するな!」というような言い方だったそうで、それが著者のカンにさわったらしい。他にも様々なところで著者の「怒り」は炸裂している。

 いろいろWeb上を調べてみると、この著者の病態は横紋筋融解と言うよりも、むしろスタチンの服用中に、薬剤とは無関係に発症したALS(筋萎縮性側索硬化症)ではないのか、という意見をお持ちの先生方も多いようだ。だが、著者はAmazonのカスタマーレビューを始め、そうした意見を公表しているところに対し名誉毀損での訴訟をちらつかせるなど、徹底的に攻撃を加え、潰しにかかっているようで、またそのことを自分のHP上で堂々と公表している。(本当に怖いからHPにリンクは張れません。検索すれば簡単に見つかる。)

 語弊があるかも知れないが、こうした「医療クレーマー」とも呼べる人々が確かに存在するということを知っておく上で、この本は読んでおく価値があるのかも知れない。


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 高脂血症薬の処方法に関して、「じぶん更新日記」の方が述べられていることには一理あるだろう。日本の保険医療制度では、一回の診察につき処方できる薬剤は原則2週間分だけ、例外として4週間までである。しかし、高脂血症に関して言えば、薬の治療効果を見る上で本当に必要なのは3ヶ月から6ヶ月に1回の診察でいい、という意見も少なくないようだ。

 しかも、実際は診察せずに薬を処方することは違法、というタテマエがあるので、「お薬だけ」という時でも、書類上は診察料を請求せざるを得ないのである。これでは、患者側からしてみれば「なんかインチキしてるなあ」という気持ちになってしまうだろう。

 重篤な副作用を防ぐという視点にしてみたって、大事なのは「1ヶ月に1回くらい形ばかりの診察をする」ことじゃなくて、「手足のしびれ・けいれん」だとか、何かヘンだなと思ったときすぐに診察に来られるような体制を作ることじゃないのだろうか。そう考えると、必要以上に頻繁な経過観察の目的で、外来をふさいでしまうような現行の保険システムこそ、医療資源の配分上ずっとまずいことをやっているのではないか、と思う。

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