Wednesday, February 23, 2005

国試各論

 本来は総論を書いてから各論を書くのがスジだと思うが、細かいことはどんどん失われていくので、とりあえず先に書くことにする。

 今年は試験監督が「机の上に書き込みがないかどうか確認してください。問題用紙回収の時点で、机や受験票に書き込みを発見した場合は不正行為とみなします」ということをしつこく言っていた。おそらく、精度の高い「再現問題」が出回るのを防ぐため、試験問題を机に転記することをやめさせる狙いがあったものと思われる。

 国家試験問題作成委員会だってアホじゃないだろうから、当然今年出た問題がどの程度「再現」されているのかくらいは調べるだろう。試験回収を行うのも、いわゆる「プール問題」を確保するためだが、良問ほど受験生がよく研究し、勉強するので差がつきにくい。そこで「ネタ」がつきた結果として今年のような間抜けな問題続出、ということになったのではないか、と私は見ている。


 ちなみに必修の「肛門カルテ問題」だが、標準外科学と内科診断学(ともに医学書院)ではみごとに書き方が違っている。標準外科の肛門の項では、円の中に波線で円腔が描かれた図(aに近いが、国試のはやけに対称的な図形だった)が載っており、一方内科診断学には大円の中にオチョボ口のようなマーク(d?)が描かれている。しかしいずれの教科書でも、「痔瘻・裂肛の位置は時計式に記載する」ことを教える趣旨の参考図であり、「標準的なカルテ図示の仕方」という意味合いではない。我が国の代表的な教科書にさえ典拠がない以上、病院ごとで記載の仕方は異なるのが普通で、これは不適切問題になるのではないかと考える。ちなみに私は「痔には奥行きがあるから」と考え、(a)(十字線入りの円を底面とする円錐状の図)を選んだ。(b)の図はなんだかやけに卑猥だった記憶がある。だれがつくったんだこの問題。

 「正しい注射器の捨て方問題」は、微妙な絵のタッチに思わず引き込まれそうになってしまった。一応今のところ、正解であるという説が優勢な(e)(針のついたままの注射器をキャップなしで捨ててある。バケツの外にあふれていない)を私も選んだが、現場ではいわゆる「安針缶」などを使い、リキャップしないまでも針は分離するところが多いのではないだろうか。私は、「どうしてもリキャップするときは台の上に置いたキャップを、片手に持った針ですくうように取り、万が一先端がキャップを突き破ってもいいように、逆の手でキャップの根本を押さえて止める」ように教わった。また、あるところでうっかり針を使用済み注射器と同じバケツに捨てたら、「おまえ、針は外してこっちに捨てなきゃダメだろ」と怒られて、オーベンがそのバケツの中に手を突っ込んで拾っていた記憶がある。従って少なからずあの絵には違和感を覚えたが(針も注射器もメスも一緒に捨ててあった)、「もっとも正解に近いものをマーク」という原則に従えばやっぱりeだろう。

 「朝起きたらぐったりしていたという乳児、来院時心肺停止で30分蘇生したが回復せず死亡確認。全身に打撲の跡を認める」問題では、周囲にかなり「母親から詳しく事情を聞く」を選んだ人がいた。私は「警察に通報する」という選択肢を選んだし、落ち着いて考えればこちらが正しいとわかるはずだ。(異状死体の届け出義務、すでに患児死亡しているため母親からの病歴聴取は意味がない)。しかし、模擬試験、問題集などでは「幼児虐待の疑いがあるときは警察に通報する」選択肢を「児童相談所に通報するのが正しいので誤り」とする問題が多々あったため、惑わされた人が多かったようだ。

 そう言う私もやはり本番の緊張というものはあるもので、後から思い起こしてあっ、と思ったような問題がいくつかあった。3日目の、病歴・心エコーから明らかにIE→MRを選ばせる問題でもなぜかMSを選んでしまったし、2日目の「洞不全症候群でペースメーカー装着している男性。突然意識消失して来院」問題では、全くMRIが禁忌選択肢であることを意識していなかった。(急性の経過を示す脳卒中ではCTが優先だろう、ということで何となくCTを選んでいたので、これは踏まずに済んだ。また踏んだとしても必修ではないのでカウントされないだろう。)帰ってから2ちゃんねるで見たときは、思わず顔が青ざめてしまった。


 いつもの模擬試験と同じく、迷った問題に関しては見直しの段階で「正解にマークしていたのに直して誤答にしてしまう」パターンと、「誤答にマークしていたが考え直して正解に付け替えた」パターンが同程度の頻度で発生したもの、と勝手に考えている。それでも、やはり見直しはするべきだろう。というのも、数年前からX2問題(5つの選択肢のうち、正しいもの2つにマークを付ける)が出てきており、これに対してマークを1つしか付けていない、あるいはその逆、といったアホらしいミスを避けることが出来るからだ。実際私も「徒手筋力テストは2」の記載にある数字だけを見て勝手にX2だと思いこみ、見直しの段階で気付いた問題があった。

 不親切だと思うのは、「適切でないのはどれか」の表現は太字で強調されるのに対し、このX1、X2問題に関しては「~はどれか」と「~はどれか。2つ選べ」の表現がまったく普通の文字で記載されているため、受験生にとってはうっかり取り間違えそうになることである。今回私はやらなかったが、まず試験が始まったときに問題用紙をぱらぱらめくり、最後の一文が「2つ選べ」で終わっているものに関しては大きく「2」と書くなどの対策も有効だろう。(問題用紙への書き込みについてはまた書く。)

 今日はこれまで。

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