Tuesday, February 10, 2004

浪速大学財前教授に朗報

がん患者3・2%は診断被ばくが原因[Yomiuri On Line]

「私はCTでガンになるリスクを避けるためにCTをオーダーしなかったんだ!」

いまになって「CTはガンの原因になります」なんていわれりゃ、そりゃみんなのけぞるわな。
だってガンを診断するのに一番よく使う画像診断はCTだろう。里見助教授もおすすめだ。

んじゃ、これからはより被爆量の少ないPETがガン診断の主流になるのか?
一回のお値段はCTより一桁違うはずだが・・・。


 しかし、この記事の電波くさいところは、まず「日本はCTが多いから被爆量が多くなり、ガン患者が多く発生している」という非常に統計学的に怪しい論調であることだ。

 また、正確な議論には、CT診断を実施することによって延長する寿命延長の効果と、CTで被爆することによって発生するガンの寿命短縮の効果を比較せねばならないと思うのだが、オックスフォード大学の研究はそこまで踏み込んだ内容にはなっていない。
 ちなみに、厚生労働省の発表する平均寿命の国別比較はこちら。

 これから医者をやっていく立場の人間として怖いと思うのは、こういうことがいったん記事になってしまうと、たとえばガン患者33人が「医者が不必要なX線検査をオーダーしたせいでガンになった」という訴訟を起こしたとすると、そのうち1人は勝訴してしまうということも考えられるわけで、じゃあ我々はガンを見逃す可能性を呑んだ上で「何もしない」のがいいのか、ということになる。

 これから様々な追加調査は行われていくわけだが、果たしてその結果「やっぱり診断のための被爆はガンの発生と有意に関係がある」という結論になったとすると、現在日本で行われている裁判の傾向を鑑みるに、今日これから行われるCTを受けた患者さんが訴訟をお起こしになる可能性がある。なぜなら、「2004年2月10日の時点で、新聞記事として公になっていた」という事実を、裁判所は非常に重視するからである。

 つねづね思うことだが、マスコミの影響というものはとても大きい。だからといって黙っていてくれと言うのはファシズムだが、本当にマスコミ人自体がそのことを自覚しているのか、時々不安になることはある。

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