Thursday, April 11, 2002

いま、やるべきこと

 何とか4年生には上がれたわけだが、今何をやるべきなのか、その優先順位について悩んでいる。
 まず、あと1年経つとポリクリ(病棟内実習)が始まるわけであるが、それに備えて内科診断学はきちんと勉強しなければならない。具体的には、診断学のテキストを記憶することに時間と集中力を傾ける、ということである。
 第二に、病理学的な基礎をきちんと固めておく、ということがある。実は三年生の段階で、病理一の教授から、今年中に「Robins' Pathological basis of desease」という本を今年中に読んでおこう、という話をされたのだが、まだ第一章を終えたばかりの所であって、1500ページの大著を読み終えるには相当な時間がかかるであろう。
  第三に、4年の終わりから、少なくとも5年生の間にUSMLE Step1を受験する、という目標を立てたのだが、そのために今手始めに生化学を復習している。
 しかしながら、たとえば「地方在住の38歳男性が就職前健康診断のため来院。眼科的検査により瞳孔下縁に混濁、および踵骨腱に結節性病変を認めた。効果的な治療のためには以下に示すもののうちどの遺伝子産物を肝細胞膜に発現させるのを目標にするがよいか」といった問題が出る。答えはコレステロール受容体の一つ、ApoB-100受容体であるのだが、こうした問題に正解するには与えられた症状に対し、まずこの患者がIII型の家族性高コレステロール血症だと「診断」する過程が必要になる。このように、すべての知識がきわめて臨床的な形を取って問われるため、「生化学」の教科書や日本の大学の講義、といったものだけではなかなか対応できないのが実状である。
 さらに、この試験は外国医学部卒業生にとって事実上all-or-nothingとなっている。具体的には、約60%の正解率で「合格」の資格が与えられることにはなっているが、実際は95%以上の正解率を出さないと、現実に米国の病院に応募した場合にことごとく担当者に弾かれてしまう、ということだ。しかもいったん中途半端な正解率で合格してしまうと、試験の受け直しはきかず、また不合格になった回数も記録される。いずれも実際の応募に関しては、応募者側にとって不利なデ-タとなる。
 「雑種第一代」の私にとっては、別にしくじったからといって何も失うものはないのであるが、米国本国に比べて、いかに日本国に暮らす我々がぬるま湯に浸かった状況にいるか、ということがこの試験勉強を通じて、いやと言うほど思い知らされるのである。

No comments: