Tuesday, March 13, 2007

僕には分からない

 なぜ敗血症を疑って血液培養を取る場合、それは抗菌薬投与以前になされるべきなのだろうか。
 実は僕には分からない。
 抗菌薬が「当たって」いなかった場合、どちらにしても起因菌は生き残るはずであるから、血液培養は抗菌薬投与後でも良いのではないか。


 抗菌薬投与後に血液培養を取った場合、偽陰性になる可能性が高いという事実。(*)
 それは感染症の教科書に書いてある。

 しかし、なぜそうなるのかきちんとした説明を読んだことがないし、聞いたこともない。

 なぜ(*)のようになるのか。

 今、ここに敗血症の患者を想定して、抗菌薬投与後に血液培養をとったとする。
 静注なり経口なりの経路で投与された抗菌薬は血中に存在するから、当然その血液を採取して培養ボトルにつめた段階では、ボトル中に「起因菌+血液+抗菌薬」が存在することになる。

 一つの仮説としては、「生体内(in vivo)での抗菌薬はダイナミックに変化する(腎排泄・肝代謝を受ける)ために、ボトル内環境(in vitro)においては抗菌薬は、生体より高濃度になり、生体に対して期待されたよりも強力に働くのではないか」という考えができる。

 もう一つの仮説として、「敗血症を来すに至るまでには、腎盂腎炎なり肺炎なりといった原感染巣の存在があるはずである。その原感染巣に対しては無力な(抗菌薬の)血中濃度であっても、血中の起因菌を殺すには十分であり、従って偽陰性になる」という考えもできる。

 しかし、どちらの考えにしても、「ではなぜ血中の起因菌を駆逐することのできる抗菌薬が、敗血症という病態を改善し得ないのか」という疑問が残る。実際臨床上困るのは、抗菌薬が「外れて」いるにもかかわらず、培養結果は偽陰性が出続ける、ということであるからである。

 そろそろ後進を指導する立場になるのだが、わからないことばかりである。

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