感染症学、という医学の一分野がある。いままで「バイ菌には適当な抗生物質打っときゃ治るだろ」的な治療がはびこっていた日本の医療現場で、まともな感染症に対する考え方がやっと浸透してきたところである。これは岩田健太郎先生はじめ米国帰りの感染症専門医の尽力があってこそのことで、私も卒後ずいぶんと薫陶を受けた。(正確には、「薫陶を受けた先生に薫陶を受けた。」)
さて、感染症学の基本的な考え方に、血液検査や、培養といったデータを絶対視せず、患者の臨床所見(発熱、呼吸数、体温など自分の「目で見て、肌で感じられる」所見)を重んじる、といったことがある。(まあ医学一般に言えることだけれど)
不二家の件に話を戻すと、牛乳が日切れであった、ということは我々の業界における「データの異常」にあたると思う。その材料に対し、毎日同じ菓子を作り続けている調理人が「十分新鮮さが感じられたので、大丈夫だと思った」というのであるから、それは「所見に異常なかった」ということであろう。
それを第三者が鬼の首を取ったように日切れの牛乳を使っていた、だからあそこは悪い商品を売っているに違いない、と短絡的に報道するのは、いかがなものだろうか。
何というか、昨今の不二家の一件に対する報道の仕方を見ると、医療報道に対するものと共通なアンフェアさ、不勉強さのようなものと同様のものを感じたので、ここに記しておく次第である。
札幌大通り地下の不二家では何回も楽しい時を過ごした思い出がある。こんなことで駄目になって欲しくない。
--
「抗菌薬の考え方、使い方」にver.2が出ました。私は、買いました。今第一版と比較しながら読んでいます。・・・もっとも、抗菌薬と縁遠い科へ行きそうだけれど。
--
それにつけてもケテックの使いどころがよく分からない。
No comments:
Post a Comment