医療はサービス業である、という考え方がある。
そういう立場から言えば、下のような意見が出るのもうなずける。
http://www.asahi.com/politics/update/1126/003.html
すなわち、医療はサービス業であるから、競争原理をどんどん投入すればよりよいものになるはずだ、ということだ。
確かに、ある面においては医療はサービス業といえる。
しかし、医師の仕事は、100%サービス業といえるものではない。
医師の職域が、ほかのサービス業、あるいは極論で言えばほかの医療職と違うといえるところは、「医師は目の前の患者一人に自分の全力を尽くしてはいけない」ということであると思う。
確かに、「目の前の患者さんにベストを尽くす」というのは、テレビや小説を通して医療の理想像として広く信じられていることではある。
だが、次のような例を考えてほしい。
症例一;Aさんは36歳の運転手である。24時間前、交通事故で頭部外傷を負い、植物状態にある。回復の見込みはほぼ認められない。彼を一日ICUで生かすのに、1日100万円の医療費が必要である。
症例二;Bさんは48歳の女性。一週間前、膀胱炎と診断され、抗生剤の処方を受けた。現代医学の常識として、こういう病気で抗生物質を3日服用すれば、その後飲み続けても大して病状の変化がないことがわかっている。しかし、Bさんは「まだ残尿感が残るので、薬をください。もし先生が出してくださらないのであれば、ほかの医者へかかります」と言う。
いずれの症例も、患者(あるいはその家族)に対して「顧客の満足」を優先させるサービス業の考え方であれば、「わずかな回復の見込みにかけて治療を継続する」「念のため、また患者の満足のために抗生剤を処方する」というのが正解だろう。
しかし、症例一のジレンマは医療費が枯渇しつつある社会において、より切実な問題となり得るであろう。また症例二に関して言えば、漫然とした抗生剤の処方が、多くの耐性菌(抗生物質に「慣れて」しまって、死ななくなったバイキン)を生み出したことは、現代医療の暗部としてすでに歴史の一部となっている。
これらの行為は、結果として、ほかの多くの患者の「生きる機会」を奪ってしまうことになる。
医師の仕事は、目の前の患者に全力投球する事ではない。悲しいことではあるけれども、その点で目の前の患者さんの要求に添えないこともある。
簡単に「医療はサービス業だ」と言うことはできるが、実際我々の「サービス」というものは個人だけに向けられるのものではなく、「マス」に対してのサービスをも含むことを忘れてはならない。
最終的にその辺のバランスをとるのは、いくら恨み言を言われようとも、医師と言う仕事以外にない。憎まれるのも、仕事の一つである、ということだろうか。
Wednesday, November 27, 2002
Sunday, November 17, 2002
say hello to...
「ブラックジャックによろしく」という漫画がある。
最近、ある先生が講義の話題に出して以来、我々の学年では結構はやっていたりする。
漫画の内容は、某医学部を卒業して、初めて研修医となった青年、斉藤英二郎の苦悩の日々を描くものだ。
先生の反応は、「あそこまでワヤじゃないだろう」
つまり、質の差ではなくて度合いの差だ、ということだ。
山崎豊子が「白い巨塔」を書いた時代から、本質的なものは変わっていない、ということか。
私の読後感は、「そういうことは、ふつう研修医になる前に気づくんだけどな」
主人公を、研修医という微妙な時期に設定せざるを得なかったからこそ、少々無理なところはある。だが、やはり一読の価値はあるだろう。
特に、日頃医学部に関わりのない人に、読んで欲しい作品である。
最近、ある先生が講義の話題に出して以来、我々の学年では結構はやっていたりする。
漫画の内容は、某医学部を卒業して、初めて研修医となった青年、斉藤英二郎の苦悩の日々を描くものだ。
先生の反応は、「あそこまでワヤじゃないだろう」
つまり、質の差ではなくて度合いの差だ、ということだ。
山崎豊子が「白い巨塔」を書いた時代から、本質的なものは変わっていない、ということか。
私の読後感は、「そういうことは、ふつう研修医になる前に気づくんだけどな」
主人公を、研修医という微妙な時期に設定せざるを得なかったからこそ、少々無理なところはある。だが、やはり一読の価値はあるだろう。
特に、日頃医学部に関わりのない人に、読んで欲しい作品である。
Tuesday, November 12, 2002
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